医療機関向け|MDX Flow

医療機関向け レセプト算定支援システム
― 算定漏れを仕組みで防ぐ開発事例

複雑な算定ルールと属人的な目視確認のために起きやすい「本来請求できた診療報酬の取りこぼし」を、Python製ルールエンジン+AI二次チェックで根拠付きに検出し、専門職の確認を効率化する医療機関向けシステムの開発事例です。最終的な算定の可否判断は必ず専門職(医師・医事スタッフ)が行う、人間レビューを前提とした設計を採用しています。

※ 情報保護の観点から、医療機関名・スタッフ・患者情報は一切掲載していません。

背景と課題

医療機関のレセプト(診療報酬明細書)は、保険診療で実施した医療行為を正確に算定し、審査支払機関に請求するための書類です。算定ルールは複雑かつ頻繁に改定されるため、事務スタッフだけでは全件を精査することが難しく、「本来算定できるはずの項目が漏れてしまう」という課題が生じやすい構造にあります。

この課題に対して、従来は「経験豊富なスタッフによる目視確認」に頼るしかなく、人員体制・担当者の知識量によってチェック品質が変動するという属人性の問題がありました。また、患者情報を外部システムに送信することへの抵抗感から、クラウド型のソリューションを導入しにくい医療機関も少なくありません。

こうした背景のもと、次の3点を同時に解決できる仕組みが求められていました。

  • 算定漏れのリスクを、担当者の経験値に依存せず仕組みで検出できること
  • 患者情報がシステム外へ流出しない設計であること
  • 最終判断は専門職が行い、AIや自動化が算定を確定させないこと

解決アプローチ

当該医療機関の実務フローと算定要件を丁寧にヒアリングした上で、Pythonを用いた内製ルールエンジンを設計・実装しました。電子カルテからPlaywrightを使って診療情報を自動取得し、内製ルールエンジンで算定の被疑箇所を検出、さらにAIによる二次チェックで根拠の補強を行う——という多層構造のチェックフローを構築しています。

開発の起点となったのは「現場の要望を技術に変換する」という姿勢です。「どのような状況で算定漏れが起きやすいか」「スタッフはどこで迷うか」「情報をどの範囲で扱ってよいか」を現場と繰り返し確認しながら、ルールとフローを定義しました。

システムの出力は「算定の被疑箇所と、その根拠の提示」に限定されます。「この項目は算定可能である」という確定判断は一切行わず、あくまで専門職の確認を効率化する補助ツールとして設計されています。導入機関では、従来属人的になりがちだった算定チェックを仕組み化し、確認の抜け漏れを構造的に減らすことを狙いとしています。

技術と設計の工夫

16 実装済み算定ルール数
622 pytestテストケース数
月次 本番運用サイクル

※ ルール数・テスト数は2026年8月時点の実装値(ルール数=実装済みルールモジュール数、テスト数=ルールエンジン本体のpytest収集件数)。運用継続によって順次拡張しています。

Rule Engine

Python内製ルールエンジン

算定ルールをPythonコードとして明示的に記述し、医療機関固有の要件にあわせてカスタマイズ可能な構造で実装。ルールの追加・変更がコードとして管理されるため、変更履歴の追跡と品質維持が容易です。

Data Acquisition

Playwrightによるカルテ情報取得

既存の電子カルテシステムのUIから、Playwright(ブラウザ自動操作)を用いて診療情報を自動取得します。外部APIが提供されていないカルテシステムにも対応できる柔軟な設計です。取得は医療機関の管理下にあるローカル環境内で、正規のログイン権限の範囲で行います。

AI Secondary Check

AI二次判定による根拠補強

ルールエンジンが検出した被疑箇所に対して、AI(大規模言語モデル)が算定根拠の補強情報を付与します。AIの判定はあくまで参考情報として提示され、算定の確定には使われません。

Quality Assurance

pytestによる622件の自動テスト

ルールエンジンの動作を622件のpytestテストケースで継続的に検証しています。ルール追加・変更時のリグレッションを自動検出し、チェックロジックの品質を継続的に維持します。

安全設計・PHI保護

医療×AIの基本原則: 本システムにおけるAIの役割は「算定の被疑箇所を根拠付きで提示する補助ツール」です。算定の可否・最終判断は必ず専門職(医師・医事スタッフ)が行います。AIの判定結果がそのままレセプトに反映されることはありません。

患者情報(氏名・生年月日・診療内容等)は、システムの処理がすべて医療機関のローカル環境で完結する設計を採用しています。情報を外部サーバーへ送信する経路をアーキテクチャ上で排除し、PHI(保護対象保健情報)の流出リスクを構造的に抑制します。

  • 患者情報の処理はローカル環境内で完結(外部送信経路なし)
  • AI二次判定の入出力は被疑根拠の補助に限定(算定確定には使わない)
  • チェック結果は「被疑箇所と根拠の提示」のみ——最終判断は専門職が行う
  • dry-runモード実装により、本番適用前の動作確認と安全検証が可能

段階導入の進め方

医療機関への導入は、現場への負担を最小化するために段階的に進めています。一度にすべての算定項目をカバーしようとするのではなく、「最もインパクトが大きく、かつ検出精度を確認しやすい算定項目」から開始し、実運用の中で対象範囲を拡張するアプローチを採っています。

  • Phase 1: ヒアリング・要件定義(現行の算定フロー・情報取扱い方針の確認)
  • Phase 2: 優先算定項目の実装とdry-run検証(本番データでの動作確認)
  • Phase 3: 限定的な本番運用開始・フィードバック収集
  • Phase 4: 対象算定項目の段階的拡張・ルールの継続改善

月次のレセプト提出サイクルに合わせてシステムを運用し、実務フローへの定着を確認しながら改善を重ねています。

よくあるご質問

同様の医療機関(在宅・外来問わず)に対応できますか?

はい、対応可能です。在宅診療・外来クリニック・訪問看護ステーションなど、業態・規模に合わせてルールエンジンをカスタマイズします。現行の電子カルテ環境や算定ルールの範囲をヒアリングした上で、段階導入の計画をご提案します。まずはご相談ください。

AIが算定内容を自動で確定するのですか?

いいえ。AIによる判定は「被疑箇所の提示と根拠の補助」にとどまります。算定の可否・最終判断は必ず医師・医事スタッフなどの専門職が行う設計です。AIの結果をそのままレセプトに反映する仕組みにはなっていません。この「人間レビューを前提とした設計」はシステムの根幹であり、変更しない方針です。

導入の進め方を教えてください。

まず現状の電子カルテ環境・算定対象・ご要件をヒアリングします。その後、限定的な算定項目から段階的に導入し、dry-runによる動作検証を行った上で本番運用を開始する進め方を標準としています。患者情報の取り扱い方針の確認も、導入前に必ず行います。

レセプト算定の課題について、
まずはお気軽にご相談ください。

「似た課題を抱えている」「自院の電子カルテで動くか確認したい」など、構想段階でのご相談も歓迎します。

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